休業中日記・6

今日は中秋の名月。

今年は八年ぶりに十五夜と満月が重なるということで、満月のお月見ができるというのは実は稀なんですね。

どうしてだろうと調べてみたページにわかりやすく書いてありましたが、天文は専門外なので理解することを放棄しました笑

放棄しましたが、ガチガチの理系分野である天文と月を愛でる風流のこころとがこうして重なり合うというのは、何か大きなロマンのようなものも感じますね。

私は風流側として、せいぜい今日もおいしくお酒を頂こうと思います笑

(雲がかからないと良いのですけど)

 

 

家族も皆ワクチンを打てたので、やっと二人の実家の家族たちに会いに行けました。

ワクチンの賛否や色々な考え方はあると思いますが、このように安心材料になるのはとても良いと思います。

何はともあれ皆元気そうでとても良かったです。

 

そんなわけで、10月1日より通常営業再開の予定で動き出しております~

営業時間は都からの要請に従おうかなと思っていますが、また早めの時間からオープンすることになるのではないかなと思います。

 

再開初期は、まず常連さま方の御予約からお受けすることになるかと思います。

初めてのお客様はもうしばらくお待ちください。

詳しいことが決まりましたらまたこちらでお知らせ致します。

そこから御予約の受付を始めますので、今しばらくお待ちくださいませ。

 

 

お店再開に向けて、ある本を読んでいました。

池波正太郎の「散歩のとき何か食べたくなって」です。

 

数々の時代小説の作者であり、グルメでも知られる池波氏の好きな飲食店を紹介した一冊です。

これがただのお店紹介のグルメ本ではないのは、戦後変わってゆく日本の街や文化を背景に飲食店が語られるからでしょう。

池波氏のこだわりや世界観にぐぐっと浸るように読むのも良いとは思いますが、

燗番は、「飲食店って文化なんだよな」ということに改めて深く感銘を受けました。

 

この本で紹介されているお店にはまだ営業されているところもあります。

創業何十年・何百年というような老舗は、味もメニューも変えずに現在まで続いていたりします。

誰でも「池波正太郎ごっこ」ができるというわけです。

 

でもそれは、やっぱり「ごっこ」でしかないのだよなあ、とも思うわけです。

池波正太郎が座った席で食べた料理を味わっても、それはやはり違うもの。

時代が違う、そこにいる人が違う(お客さんの職業や生活が違う。その店へ行くのが「生活」なのか「贅沢」なのか「観光」なのか)、働いている人が違う、見える景色も違う・・・

 

これって当たり前のようで、なんだかすごく本質的なことだなあなんて感じました。

全く同じことが繰り返されることの無い飲食店の背負ったある種宿命のようなもの、、全く同じ状態を残すこと、って飲食店においてほぼ不可能なのだなあと。

 

それでも、そんな風に日々変わってゆくからこそ飲食店は時代のニーズをいち早く反映する。

飲食店は、言わば生きる文化なのだ。としみじみ感じたのでした。

 

コロナ禍において、苦境に立たされた飲食、特に酒場業態。

でも、これって文化なんですよね。

おいしいお料理とお酒を出して、好きだと言ってくれるお客さんに来て頂いて。それだけのことですが、文化を担っているのですよね。お客さんたちと一緒に。

 

池波氏は、古き良き東京がどんどん失われてゆくことに「一種の怖れを抱」き、本書について「この後二十年もたてば、この本は小さな資料になるかもしれない」と書いています。

悲しくもその予言はきっと的中してしまっているけれど、でもそれと同時に、新しい食文化が次々と生まれている。

この本を読んで、古くて良いもの(良かったもの)を尊び惜しむ気持ちと共に、現代の東京でお店を続けることを誇りに思う気持ちも芽生えました。

 

なんだかまた長々と書きましたが、要するに営業再開に向けてやる気が出たよというだけのことです笑

 

ちなみにこの本、燗番が大学に入った頃に(十年以上前の話です)父親が読んでいたものを譲り受けたのが最初に読んだきっかけでした。

父の本は古かったこともあり、半分くらい読み進める頃に、糊が剥がれたのかバラバラに壊れてしまったのですが、「やたらおいしそうな本だなあ」と思ったのを覚えています。

その頃から食いしん坊であることは変わっていませんが、まさか自分が飲食店をやっているなんて想像もしていませんでした。

 

先日、食エッセイを読みたくてふと目に留まり、また新しく買いなおしたのでした。

十何年の時を経て読了。

 

文庫本の初版は昭和五十六年。そこから令和二年に刷られたこの本はなんと六十一刷目。

驚くべきロングセラー。多くの人に読まれているのだなあと感動してしまいます。

この本をくれた父はどういう感想を抱いたのでしょうか。この本の中から行ってみたお店もあるのかな?そんなことを考えると面白いです。今度会った時に聞いてみようと思います。

 

飲食がすきな方にはおすすめです。

軽やかな筆致ですぐに読めますし、文章を読んでいるだけでお酒が呑みたくなるという、「おつまみ本」でもありますよ。

 

 

次回更新時は営業のお知らせができるかなと思います!

くだらない休業中日記に長らくお付き合い頂きありがとうございました。恥ずかしいのでお店で感想を言うのはやめてください笑

 

それではまた~

のたりのたり